週休二日〜アニメと文学の分析〜

ネタバレあり。一緒に読み解いてくれる方募集中です。詳しくは→https://yomitoki2.blogspot.com/p/2-510-3010031003010013.html

2020-01-01から1年間の記事一覧

読み解きマニュアル~短編ver~

構成読み解きと称して小説、映画、アニメの構成をエクセルに打ち込んでウンウン唸る日々をかれこれ2年ほど続けています。 と、我ながら自己紹介にはいつも「エクセルに打ち込んで」という文言を入れているのですが、具体的に「何を」「どうやって」エクセル…

魔の山 追記その4~ワルプルギス・ループについて~

dangodango.hatenadiary.jp 上の解説で最も肝になるのが「ワルプルギス・ループ」の項である。トーマス・マンはあるいは当時の文学者は、時間問題をかなり重要視していた。 ワルプルギス・ループと名付けてはみたが、実際にはループが完成しない。ループする…

ヴィスコンティ「山猫」感想

ルキノ・ヴィスコンティ「山猫」を見た。 山猫 4K修復版 [Blu-ray] 発売日: 2016/08/26 メディア: Blu-ray 随分前に見たきりになっていたから、新鮮な心持ちで鑑賞に臨めた。 この作品に限らず、ヴィスコンティ映画の魅力は「本物」の貴族が描かれることにあ…

涼宮ハルヒの新刊

引用:https://www.animatetimes.com/news/details.php?id=1600416931 2020年11月、涼宮ハルヒシリーズの新刊が出版された。 9年半ぶりの新刊らしい。 どちらかというと、9年経ったというのに大して成長していない自分の方に驚いているわけだが、ともかく新…

私の京アニ史 その4

「私の京アニ史、第四回目である」 「随分とお久しぶりやな」 「数えてみたところ、前回から9ヶ月ぶり、我々の登場自体はおよそ半年ぶりとなる」 dangodango.hatenadiary.jp dangodango.hatenadiary.jp 「えらい間が空いたな」 「今年は梅雨がやけに長かった…

読書論 その1〜量であるか質であるか〜

「作家志望は1000冊読んでスタートライン」 「マイナーかつ難解な作品を読んでこそ教養人」 今も昔も読書家は読んだ本の冊数で競争し、読破したタイトルのマニアックさで自己を顕示します。普段は理性的なこと言っている人でも、読書になると急に根性論…

読み解き物語 その4

2020年1月 dangodango.hatenadiary.jp ダンテ「神曲」の解説記事を作成し始める。「神曲」は「魔の山」の下敷きにある作品で、読解には欠かせない。なので先に「神曲」の解説記事を作る必要があった。 「なんで先に読み解く必要があるのか?」というとその方…

神曲 追記その3

dangodango.hatenadiary.jp note.com 結構昔から「銀河鉄道」と「神曲」には強い繋がりがあるんではないかと考えている。しかし、有力な証拠は得られない。登場人物がイタリア名(ジョヴァンニ、カムパネルラ)と三位一体教義くらいである。 ストーリーとし…

魔の山 追記その3

今更気づいたが、ヒトラーの別荘の名前が「ベルクホーフ」であった。 これは舞台となったサナトリウム「ベルクホーフ」と名前が一致している。皮肉なもんである。 もちろん「魔の山」発表が1925年、ヒトラーが山荘を改築して名称変更したのが1933〜1935年ご…

読み解き物語 その3

前回はこちら dangodango.hatenadiary.jp 2019年1月 依然として魔の山読み解きは難航していた。気を紛らわすためにブッデンブロークスのキャラ一覧表など作ってみたが、結局こちらも難航したのでやめた。 Twitterやってたら、面白いアニメがあるとフォロワー…

魔の山 追記その2

dangodango.hatenadiary.jp 「主人公ハンス・カストルプがホムンクルスである」というただこれだけのことに実質1年半掛かってしまった。 初読の段階でキャラ戦略がファウストなのではないかと疑っていたが、ファウスト最大の特徴である女好きがハンスにあん…

魔の山 追記その1

「魔の山」では7という数字が鍵を握っている。これは下敷きとなっている神曲煉獄篇(七つの大罪)とファウスト第二部第二幕から来ている。なぜ7という数字が西洋人にとってここまで重要なのか、という淵源については依然として捜索中である。七つの大罪は枢要…

読み解き物語 その2

前回 dangodango.hatenadiary.jp 2018年 7月 2週間後に返信が届いた。 ・「雪」に出てくる二人の老婆はセテムブリーニとナフタに相当する ・「風立ちぬ」を見た流れで読んでみたが手強くて中断した ・Twitterやっているのでそっちで連絡取ってほしい という…

読み解き物語 その1

dangodango.hatenadiary.jp トーマス・マン「魔の山」の読み解きついにアップした。 ここまでくるのに2年かかった。2018年から読んでいるので、「注文の多い料理店」や「輪るピングドラム」よりもずっと前から読み解きしていたのである。脱線しすぎかもしれ…

「魔の山」解説【トーマス・マン】

「魔の山」は1924年に発表された長編小説です。第一次世界大戦を挟んで、ドイツ人作家トーマス・マンが10年かけて完成させた代表作です。 魔の山(上)(新潮文庫) 作者:トーマス・マン 発売日: 2017/05/26 メディア: Kindle版 原題 「魔の山」の原題…

怠惰

7月が終わってしまう。 2018年6月から「魔の山」読み解き開始して2年が経過した。ここまで来ると、「よし、読み解けた!」というよりも「もうこの辺でよしとするか」という諦観に至る。あと少しで手が届きそうな感触があるのだが、どつぼにハマる気もする。 …

「ブリキの太鼓」感想

映画「ブリキの太鼓」を見た。監督はフォルカー・シュレンドルフ、原作はギュンター・グラスの同名小説。 ブリキの太鼓 -日本語吹替音声収録コレクターズ版- [Blu-ray] 発売日: 2020/02/04 メディア: Blu-ray 昔、深夜にテレビを付けたらたまたま放送してい…

神曲 追記その2

神曲 地獄篇 (講談社学術文庫) 作者:ダンテ・アリギエリ 発売日: 2014/06/11 メディア: 文庫 解説ではあまり触れなかったが「神曲」では鋭い政治批判が展開されている。この時代の政治批判とはすなわち教皇批判である。現代では優れた翻訳と注釈があるので凄…

神曲 追記その1

dangodango.hatenadiary.jp 先日、「神曲」の解説記事をアップした。ファウストと同様、射程がややというかかなり広い作品なので、網羅的に説明するのが難しい。補足を加えて、もう少しまとまった記事に書き直さなければと思うが、ひとまずこれでいいことに…

「Re:ゼロから始める異世界生活」について語るの巻

「というわけで、『Re:ゼロから始める異世界生活』について語っていこうと思うんやけど」 「なんで毎回毎回、話題の振りが唐突なんや」 re-zero-anime.jp 「いや、照れくさいやんか。かしこまって、気を付け、礼して始めんのが」 「気を付け、礼はせんでもえ…

「神曲」解説【ダンテ・アリギエーリ】

ミケランジェロのシスティーナ礼拝堂天井画 ロダンの「地獄の門」「考える人」 リストの「ダンテ交響曲」 イタリアの国語 これら全部ある作品の影響を受けたと言われています。西洋文化に巨大な足跡を残し、ルネサンスへと導いた古典、それが「神曲」です。…

2020年冬アニメ感想 その2

マギア・レコード まどマギの派生作品。スマホアプリが原作らしい。脚本は虚淵玄ではなく劇団イヌカレーであった。劇団イヌカレーさんを存じあげないのだが、宮沢賢治を匂わせるシーンが序盤にいくつかあった。第一話のモノレールが三陸鉄道もっと言うと銀河…

トマス・アクィナスの功罪

絶賛、「神曲」解説書いている途中なのですが、あまりにも長くなりすぎたのと整理の意味も込めてPart2 前回、三位一体教義について簡単にまとめました。 dangodango.hatenadiary.jp 前回はプロテスタントのことまで触れて終わったのですが、その前にトマス・…

三位一体教義について

絶賛、「神曲」解説書いている途中なのですが、あまりにも長くなりすぎたのと整理の意味も込めて三位一体教義について簡単にまとめます。 三位一体について、下の記事の中段辺りで説明をしました。 dangodango.hatenadiary.jp 簡単に言いますと、キリスト教…

映画「日の名残り」感想

日曜日を使って「日の名残り」を見た。読み解きする体力は無いが、ずらずらと書くだけ書く。 アンソニー・ホプキンスの演技は素晴らしく、音楽も格調高い。だがそれ以上に極めて政治的な作品ともいえる。 fufufufujitani氏が指摘するように「日の名残り」の…

2020年冬アニメ感想 その1

実は深夜アニメ視聴してたので感想書いておく。 どうもアニメを見る体力が衰えているらしく、2020年冬アニメは6本(うち劇場版アニメが1本)のみとなる。寂しいかな。 感想長くなったので半分に分けて記事アップしていく。 ・ドロヘドロ 今期一番楽しみに…

「トニオ・クレーガー」追記 その3

新型コロナウイルスの影響で混乱が生じていたがようやくブログの更新ができる。 まるでペストの如き、猛威を振るうウイルスの前に戦争前夜のような生活が続いている。ペストと言えばトーマス・マンの「ベニスに死す」でもペストが出てくる。 dangodango.hate…

私の京アニ史 その3

「ここまで魂の遍歴を追ってきたわけだが」 「誰も追ってないけどな」 「私の京アニ史の続きをやっていく」 「前回の続きはこちら」 5.中二病でも恋がしたい! 「5番目はこれ」 「これまた女子高生」 「中二病の女の子と元・中二病の男の子の話」 「痛い…

「神曲」の原題について

ダンテの「神曲」一通り読み終わった。 しかし、どうも「神曲」というタイトルがおかしい。違和感を覚える。 原題はLa Divina Commedia。直訳すると神聖喜劇である。ダンテ自身はCommedia、とだけ呼んだらしいが、あとから神聖が前に付いた。 (ダンテの時代…

「トニオ・クレーガー」追記 その2

「トニオ・クレーガー」ラストに出てくる二人組の男女はハンス・ハンゼンとインゲではない、という意見が翻訳者の間であるらしい。 はっきり言って不毛である。 仮にあの舞踏会にいたのが彼らではなく、赤の他人だったとしてもトニオの結論は変わらない。「…