まどマギを語るつもりが脱線しまくるの巻
「ごきげんよう、みなさん」
「気づけば夏も終わりすっかり秋色になりましたが」
「いかがお過ごしでしょうか」
「ということで早速、『魔法少女まどか☆マギカ』について喋っていこうかなと」
「唐突やな」
「BSで再放送してたからな」
「では聞かせてもらおうか」
「偉そうに」
勤労
「上の記事では『まどマギは段々と勤勉になってゆく、勤労が自己目的化してゆく物語』とある」
「これは恐らく正しい」
「まどかの母親が愚痴を言いながらも働いている姿から勤労が重要な要素だと分かる」
「父親のセリフに『仕事が好きなのではなく、頑張るのが好き』『苦難を乗り越えた時の満足感が宝物』とあり、彼女は家族のためではなくあくまで自分のために働いている、勤労が自己目的化している」
「ある意味まどかの未来を暗示していると言える」
「次に暁美ほむらについてなのだが」
「彼女は時間を戻す能力と止める能力を持っている。それらを駆使してまどかを守り、ワルプルギスの夜という魔女を倒そうとする」
「さらに元を辿ると、シェイクスピアの夏の夜の夢になるのだがそこは割愛する」
「『ワルプルギスの夜』なんてカッコイイ名前だからアレやけど、要するに乱交パーティーで、流石にそのまま描写したら不味かろう、ということで分かりにくく描いている」
「現にファウスト第一部の中でも、魔女や人間など登場人物がやたら入り乱れる難解な箇所ではある」
「ま、口に出しづらいことを何とか伝えるのが文学的表現でもある訳なんで」
「この辺はゲーテさんも苦労したのではないでしょうか」
「まどマギでも歯車のついた魔女が真っ逆さまになって鬼火を出している程度に抑えてある」
「最近は知らんが、日本でもお祭りで若いエネルギー暴走して盛り始めてしまう人々が田舎だといる」
「ああいうのに出くわすと、ついつい謝ってしまうのはなんでなんやろか」
「こっちはなんも悪くないのにな」
「話が逸れたな」
「せやな」
ループ時間
「話を戻すと、ほむらはワルプルギスに勝てないので過去に戻ってもう一度やり直す。これを繰り返す」
「いわゆるループ物ってやつやな」
「ハルヒのエンドレスエイト、シュタインズ・ゲートとかでお馴染み」
「毎回、微妙に違うんだけど結末は同じになってしまうんやな」
「これに関してはファウストがモチーフになっていることを考えると深い意味をもってくる」
「そもそもファウストはキリスト教的世界観に異議を申し立てた、もっと言うとアンチ・キリストの書である」
「中でも時間の捉え方に文句を言うたことがまどマギに関係してくる」
「キリスト教の時間観は始まりと終わりがあってそこを一直線に流れる。直線的な捉え方をする」
「ところが、ゲーテはそれを否定する。そんでもって時間は円環的やと、始まりも終わりもない、ループするもんやと主張する」
「ループ時間は第二部古代のワルプルギスの夜に登場するホムンクルスで描かれてるが、まどマギだとワルプルギスと闘い、時間をループさせる暁美ほむらになる」
「こういうところを見ても、ただ単にガワだけ真似したんではなく、ファウストの中身をきっちり読み込んで作られていることが分かる」
「ちなみに時間停止能力は『時よとまれ、そなたは美しい』からきている」
聖女の救済
「結局、ループでは勝てへんからまどかが概念、円環の理になって魔法少女を救う訳だが」
「これはラストの有名なフレーズ『永遠にして女性的なもの』なんやろうね」
「ファウストがグレートヘンの祈りによって救われるように、魔法少女たちはまどかの祈りによって救われる」
「過去現在未来すべての魔法少女を救済するのだから、まどかのガッツは相当なもんやで」
「それもループ時間のお陰やな」
「あとラストはキリスト教教義における女性の編入を訴えたものなのだが」
「まどかの母親はキャリアウーマンで、代わりにお父さんが専業主夫をやっている」
「こういう家庭は現代だからそこまで不思議なことではないんやけどね」
「女性が重要なのを示していることが分かる」
円環の理
「にしてもこの円環の理という概念、非常に仏教的だとは思わんか」
「苦しみ続ける魔法少女が円環の理によって消滅する=輪廻から解脱する、と考えるとそれっぽいかもしれんな」
「まどかは聖女でもあり、如来様でもある訳やな」
「うむ」
日本的時間観
「そんでもって、いよいよ劇場版『叛逆の物語』にてほむらの救済が行われようとしたとき...」
「まさに叛逆が起きる」
「これはTV版最終回で魔獣という敵の姿が僧侶であったことと合わせると、仏教的なループ時間の否定だと思われる」
「ファウストをモチーフにしてるならループ時間は肯定しないとあかんやろ」
「恐らくここがまどマギ独自の部分で、時間とは直線でもあり円でもある、つまり折衷的なものだという時間の捉え方をしている」
「なんだかややこしくなってきたな」
「まどマギが複雑なアニメであることは多くの人々が気づいているはずや」
「折衷型で代表的なのは日本神話やな」
「天地開闢という始まりはあれど、終わりははっきりしていない」
「『一月一日』にあるように『終わりなき世のめでたさを』なので」
「ちなみに『君の名は。』は折衷型の時間観だったりする」
「紐は一直線にもなるし、丸く円にもなる。折衷的なのをさりげなく表現している」
「まどマギだとまどかのリボンになる」
「劇場版の最後でほむらがまどかに渡しとったな」
「ファウストだのなんだの言ってきたが、結局日本の価値観になってくる訳やな」
「とはいえほむらが悪魔化してたので、あそこから二転三転してどこに着地するか分からん」
「確実に言えるのはまどマギはファウストを吸収し、魔法少女の物語にうまく組み替えて、上積みをしようとしたということやな」
「錬金術師が魔法少女に、メフィストフェレスがインキュベーターに、など言い換えが面白い作品だった」
「単純に魔法少女らしからぬ展開が面白かったのもあるけどな」
おわり
「まあ偉そうに色々言ってきたが、もう少し研究しないと何とも言えん」
「ええんかそれで」
「しゃーない、どなたかにお任せしたい」
「お前はやらないのか」
「面倒なので遠慮しておく」
「適当やな」
「しゃーない」
「ということで長々喋ってきましたが」
「今回はこの辺で」
「さようなら」
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2011年は震災の年ですが、まどマギ、あの花、ピングドラムが出た年でもあります。