読み解き物語 その2
前回
2018年 7月
2週間後に返信が届いた。
・「雪」に出てくる二人の老婆はセテムブリーニとナフタに相当する
・「風立ちぬ」を見た流れで読んでみたが手強くて中断した
・Twitterやっているのでそっちで連絡取ってほしい
という内容だった。
正直返信がくると思わなかったのでたいへん驚いた。もっと驚いたのはTwitterをやっていることだった。意外とヤングな人である。急いで検索したらfufufufujitaniなるアカウントが浮上した。主に経済方面のツイートが多く、「だから指環の解説ができたのだな」と合点がいった。
早速、フォローさせてもらい、読み解きライフが始まった。
「読み解きライフが始まった」といってもすぐに「魔の山」が読み解けるわけでもなく、脇に置きながら主にアニメの読み解きに取り組んでいた。
Twitter運用前から「週休二日~アニメと文学の分析~」(当時は別名だった記憶がある)のはてなブログを立ち上げていた。CLANNADやヴァイオレット・エヴァ―ガーデン(二つとも途中で挫折)を読み解いていた。この辺については「私の京アニ史」で語る。
2018年 7月~9月
7月~9月は涼宮ハルヒを見まくって、fufufufujitani氏の真似して表を作り、闘っていた。やってみて分かったのが、とてつもなく地道で、とてつもなく面倒で、とてつもなく疲れる作業であることだった。人間答えがあるのか見当がつかない努力はできない。はやくもへこたれそうであった。「どうやったら、うまく章立て表を作れますか?」と聞いてみたが、上手い方法はなく氏もかなり時間を掛けているようだった。やはり自分にはセンスが無いのだろうか、と落ち込んだが、氏曰く「感度は関係ない」とのことだった。少し希望が見える。
2018年 10月
ここいらで「魔の山」の主人公はファウストなんじゃないかと勘繰りだす。神曲煉獄篇を下敷きにしているのでダンテではあるのだろうが、どうもそれだけではないような気がしてならなかった。第5章には「ワルプルギスの夜」が出てくる。これで関係ないわけないだろう。そう決めつける反面、ハンス・カストルプはあまりファウストっぽくなかった。モヤモヤしたまま時間だけが過ぎた。
しかし、一つだけ前進があった。宮澤賢治「注文の多い料理店」解説記事の完成である。
なんで「注文」の読み解きをやったのかというと、セテムブリーニとナフタの議論を追うのに疲れていたときにfufufufujitani氏が鴎外「阿部一族」のNaverまとめをアップしたからである。解説読んですぐに本文も読んだ。かなり短い作品である。「自分もものすごい短い作品をやろう」ということで手元にあった「注文」の章立て表を作り始めた。
ラストシーンが紙幣批判を意味しているというのは、コンビニでお会計をしているときに思い浮かんだものである。手渡されたくしゃくしゃの野口英世を見て「何か」が脳内に降ってきたのを覚えている。だから私の手柄というより金髪の新人バイト君のおかげなのだが、ともかく一気呵成に一晩で書き上げてしまった。
これが文学作品としては初めての解説記事である。
fufufufujitani氏は「読み解き仲間は初めてできた」と喜んでくださった。これは衝撃的だった。
氏の一番古いブログ記事はカラマーゾフに関するもので、2010年だったと思う。8年間、読み解きを続けてきたという胆力とこれほど素晴らしい解説に大半の人間がろくすっぽ関心を示さなかったという事実に打ちのめされた。特に、後者は読み解きを広めていく上で無視することのできない、我々と所謂文学プロパーとの乖離である。
このあと、アニメ記事を少し書いた。依然として「魔の山」の進捗が悪かったので、代わりに短編「トニオ・クレーガー」の章立て表を作る。
2018年 11月
この辺で「いきなり長編に挑むのは危険なんでは?」と思い始める。そこで同じ作者の短編をやってみる。非常に堅苦しく胃もたれするほど濃い文章であるが、なかなか心に沁みる内容であった。
その勢いのまま、もう一つの短編「ベニスに死す」にも挑む。こちらはヴィスコンティの映画で有名だったので内容はすんなり入ったが、素直に気持ち悪いという感想が出た。最後にアッシェンバッハが見たのは善悪の彼岸なのだろうが、とにかく古代ギリシャ世界に対する思い入れが強い。
2018年 12月
「魔の山」のエクセルとにらめっこする毎日が続く。同時並行で読んでいた「ブッデンブローク家の人びと」の章立て表を作り始める。こちらもかなり長いが、ストーリーはかなり面白い。
特に進捗が無いまま大晦日を迎えた。
つづき