週休二日〜アニメと文学の分析〜

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私の京アニ史 その3

「ここまで魂の遍歴を追ってきたわけだが」

 

「誰も追ってないけどな」

 

「私の京アニ史の続きをやっていく」

 

「前回の続きはこちら」

 

5.中二病でも恋がしたい!

 

「5番目はこれ」

 

「これまた女子高生」

 

中二病の女の子と元・中二病の男の子の話」

 

「痛いな」

 

「本作の特徴は日常と妄想のギャップにある」

 

「他愛ない高校生の日常がふとした拍子に、主人公の妄想世界に一変する」

 

「この妄想シーンを全力で描くのが京アニ

 

「武器やら魔法陣やらはもちろん、戦闘シーンまで丁寧に、ダイナミックに映し出されるのでほんまもんの魔法大戦なんじゃと錯覚する」

 

「リアルを捨てつつ論理的に描く」

 

「論理を捨てつつリアルに描く、かもしれんで」

 

「どっちでもええわ」

 

「左様で」

 

「しかし、この妄想は物語が進むにつれ出てこなくなる」

 

「つまり中二病が治っていくわけか」

 

「劇場版ではほぼ出てこなかった記憶がある」

 

「少し寂しいけどそうやって大人になるんやろうな」

 

「ところで」

 

「なんや」

 

「この主人公、小鳥遊六花というのだが」

 

「たかなしりっか、と読む」

 

「難読ではないか」

 

「小鳥遊はさることながら六花も珍しいな」

 

「雪を指す言葉で結晶が六角形の花のように見えるのが由来らしい」

 

「雅なもんで」

 

「ともかく六花はライトノベル・アニメ辺りでよく見かける気がするので覚えておきたい」

 

「気がするだけなのか」

 

「珍しいから印象に残りやすいだけだと思われる」

 

「認知の歪みやな」

 

6.けいおん!

 

 「お次はこれ」

 

「こちらも大人気作」

 

「一時期、軽音楽部へ入部する学生が増加したとかなんとか」

 

「実際はどうなんやろうな」

 

「ところで、けいおん!について知人がこんなことを言っていた」

 

「知り合いなんておったんやな」

 

「曰く『けいおん!小津安二郎の影響を受けている』と」

 

「ほう」

 

「低めの角度からカメラを固定したかのようなカットが幾度か散見された」

 

「アニメだからカメラなんて無いけどな」

 

「便宜上や」

 

「便宜上か」

 

「そういう訳でけいおん!は小津の影響を受けているんではないかと」

 

「なるほどね」

 

「ただ『東京物語』の登場人物を見れば分かる通り、小津映画は役者の顔が死んでいる」

 

「抽象性を高めるために、棒読み気味で固い演技をさせるのが小津安二郎の特徴だった」

matome.naver.jp

「監督はこのために何度も撮り直し、役者を疲弊させていたらしい」

 

「昭和根性物語である」

 

「では、平成の革新的アニメはどうかというと」

 

「みな表情豊かである」

 

「バンドの練習、ティータイム、文化祭、至る所で一喜一憂しておるな」

 

「この理屈でいくと抽象度は低いとなるな」

 

「アニメやし抽象度なんて気にせんでええんや」

 

「芸術映画ではないからな」

 

「そんでもって東京物語にあった『家族』及び『時間の違い』の主題もけいおん!にはない」

 

「主人公の両親は一瞬しか映らず、放課後のスローな時間は描かれど例えば、夢に向かって前へ進む(時間を進めたい)少女と漫然と生きている(時間が停止している)少女の対比といった構図も出てこない」

 

「まあ対立のない穏やかな日常を描いたのが本作の魅力やからな」

 

「というか軽音部での日々はまるで時間が止まっている。視聴者である我々もずっとこのまま対立のない、生温い世界に居たくなってしまう」

 

「青春ってそういうもんやろ」

 

「時折、誰もいない廊下や教室を数秒映すのも時間の停止を表現している」

 

「それに1期の11話で澪と律の仲違いがあったやないか。きちんと対立は描いてる」

 

「ああ作中"唯一"、不穏な空気が流れるあの回か。明らかに不自然で、まるで『きちんと対立や葛藤は描かれています』と言って欲しいかのように」

 

「何が言いたい?」

 

「いや君は良いところだけを取り上げて、闇から目を逸らしているんではないかと思ってな」

 

「おもろいもんをおもろいと言って何が悪い」

 

「その通り。面白いだけでなくとても癒される。少女たちがただ戯れる姿を飽きさせずに構成する、そんな作品は未だかつて存在しなかった。歴史に残る傑作。間違いなくここ20年で最高のアニメの一つと言っていい。」

 

「問題ないやろ」

 

「ゆえに影響も絶大で後のアニメ文化の潮流を決定づけた。良くも悪くも」

 

「"悪くも"ってなんや」

 

「少女たちの停滞した時間を愛でるあまり君の時間まで止まっているのではないか?少女たちの閉鎖的な空間を愛するあまり君まで閉鎖的になっているのではないか?君のそれは好きだからではなく現実逃避なのではないか?」

 

「そんなの余計なお世話や」

 

「あるいは逆か。君の時間が停滞しているから、君が閉鎖的だから、君が現実逃避しているから彼女たちを愛するのか」

 

「時代遅れのオタク批判はやめてくれ。それにアニメと現実の区別くらいつく。ただ癒しを求めていただけや」

 

「傑作を礼賛するだけでなく、癒しを求めるだけでなく、その素晴らしさの裏には闇が内包されていることを認識する必要がある」

 

「そんなこといちいち口に出さんでもええやないか」

 

「感傷に浸るだけが『私の京アニ史』ではないし、今だからこそ闇と向き合わなければならないんや」

 

「そうなのか」

 

「そうや」

 

「承服しかねるな」

 

「まあ今回は言い過ぎたわ、すまんな」

 

「ええんやで。こっちもすまんな」

 

「ええんやで」

 

「今回はこの辺で」

 

「さようなら」