週休二日〜アニメと文学の分析〜

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「青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない」を見たの巻

(以下、ネタバレします。ご注意下さい)

 

 

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©2018 鴨志田 一/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/青ブタ Project

 

 

謎多き女性

 

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©2018 鴨志田 一/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/青ブタ Project

牧之原翔子は中学生です。心臓が悪くて入院しています。

 

しかし、大人になった牧之原翔子もいます。未来からやって来たそうです。理由はこれから起きる事故で死ぬ主人公を救うためです。

 

その後色々あって、主人公を過去の世界に送ります。夢を見るとかなんとかで行けるそうです。

 

ラストで死んだはずの翔子が転生しています。

 

 

 ちょっと難しい?

 

 設定に無理があります。

 

夢を見る云々で過去に行ったり、転生したり、と訳分かりません。もしくは私の理解力が無いか、です。「今のはどういう意味だ?」と考えながら見てたので。原作ではもうちょっと丁寧な説明があるのではないでしょうか。

 

ぶっちゃけ文句の付けどころなのですが、何か理由がありそうなので考えていきます。

 

涼宮ハルヒの消失」と「傷物語

 

「青ブタ」の登場人物は、「涼宮ハルヒシリーズ」と「物語シリーズ」を下敷きにしています。二つの作品の特徴を活かしたハイブリッドな作品を目指したのがこの作品です。今回のストーリーに関係してくるのは「涼宮ハルヒの消失」と「傷物語」です。

 

と言えば聞こえはいいですが、難易度が上がるので無理が生じます。急にタイムリープするだなんて言われてもびっくりですから。未来の組織に所属している、とかだったら分かりますが。(あと主人公の言動が若干古い)

 

もう一つ、ハイブリッドは欠点を無くすのに効果的な代わりに、長所が薄まります。「青ブタ」はハルヒとかと比べると、引き込まれる感じは弱いですから。

 

 

dangodango.hatenadiary.jp

 

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 しかし、登場人物とても魅力的です。それぞれのキャラについては以前やったので、今回は牧之原翔子に注目していきます。

 

消失

 

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牧之原翔子は朝比奈みくると対応しています。

 

高校生と未来からきた大人版の二人のみくる

中学生と未来からきた大学生の二人の翔子

 

 みくるは、胸に黒子がある

翔子は、胸元に傷がある

 

みくるは、主人公を過去で待っている

翔子は、主人公を過去へ送る

 

最後のは対応というより、対句です。

 

傷物語

 

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翔子は忍野忍と対応しています。

 

忍は、心臓を抜き取られていました

翔子は、心臓を患っていました

 

忍は、主人公の血を吸って生きながらえます

翔子は、主人公の心臓を移植してもらって生きながらえます

 

忍は、主人公に自分を殺すよう仕向けます

翔子は、主人公に自分を(間接的に)殺すよう仕向けます

 

忍は、ラストで無害で無表情な残りかすのような存在となり主人公の血を吸っています

翔子は、ラストで転生して笑顔で主人公を振り返ります

 

これも最後のは対句です。この対句が恐らく最重要ポイントです。

 

なぜ下敷きにしたのか

 

そもそも、なぜこんなオマージュをする必要があったのでしょうか。魅力的なキャラにはなりましたが、作品の面白さにはつながるとは限りません。

 

思い返すと、「青ブタ」は「自分と他者」との関わりを描いてきたアニメでした。

 

ネットであらぬ噂をウワサを立てられ孤立する咲太、有名人であるがゆえクラスで距離を置かれる麻衣、LINEでいじめられ不登校になる花楓、周りの目を気にする古賀、姉と比較されるのどか、裏垢で自撮りを投稿する双葉。

 

SNS関連のものが多いですね。こうした人間関係のストレスから思春期症候群を発症します。

 

自己の内面

 

しかし、「ゆめみる少女の夢を見ない」では「自己の内面」がテーマになっています。翔子の思春期症候群は「成長したくない自分」と「成長したい自分」が分離したことが原因でしたから。

 

「消失」では、キョンが自問自答してSOS団との関わり方を変えます。「自分ともう一人の自分」です。自分の内面を見つめ直すのです。長門の物語が強調されがちですが。

 

選択すること

 

では、「傷物語」を下敷きにしたのはなぜでしょうか。

 

恐らく、「みんなが不幸になる選択への批判」です。

 

咲太は麻衣さんも翔子さんもどちらも救いたい。しかし、どちらか選ばなければなりません。決められなかった結果、麻衣さんが死にます。みんなが不幸になります。最悪の選択です。

 

傷物語」では、阿良々木くんが忍と羽川たちのどちらも救おうとした結果、みんなが不幸になる選択をします。最悪の選択です。

 

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引用:https://www.kango-roo.com/sn/k/view/3539

「ここにいるみんな全員救いたいんだ!」っていうのは綺麗ごとです。できるのならそうするに越したことありませんが、現実ではそう上手くいきません。優先順位つけて選択しなければいけません。

 

ご都合主義

 

だからラストの翔子の笑顔は「誰かを捨てて誰かと生きる選択の肯定」です。「阿良々木くんへの批判」とも取れます。搾りかすになった忍と転生して笑顔になった翔子。結局3人生き延びたのは、ちゃんと麻衣さんとの生きる道を選択できた(翔子さんを捨てた)咲太へのご褒美です。

 

つまり、綺麗ごとを否定するためにご都合主義をしています。矛盾しています。訳分かりません。

 

「ご都合主義だ!」「幼稚なハッピーエンド」とか言われそうですが、私は良い終わり方だと思います。良いじゃないですか、ご都合主義。綺麗ごとより数倍マシです。覚悟決めて残酷な選択をしたからこそ、あの笑顔が嬉しくて、切ないです。

 

エンディングテーマ

 

エンディングの曲は感傷的で好きなのですが、映画館で聴くとより切なく感じました。オープニングは流さなくて正解ですね。雰囲気違いますから。

 

 余談

 

初っ端からテレビ版の続きが始まるので、初めて見た人はびっくりしたかもしれない。びっくりしたといえば、麻衣さんが轢かれたシーンで音が急に大きくなったのは心臓に悪かった。

 

結局、翔子が「成長したい自分」と「成長したくない自分」を切り離したことと未来からきた翔子が同一人物になる理屈が分からなかった。「咲太の心臓の翔子」と「麻衣の心臓の翔子」と「転生した翔子」が全員違うから混乱した。

 

色々言ってきたが、まだ一回見ただけなので偉そうなことを言ってはいけなかった。少し時間空けてもう一遍見返そうと思う。

 

 

最後に、隣の高校生が号泣していた。

 

<関連>

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 「消失」も雪の降る中、自己の内面を見つめます。音楽も切ないです。