週休二日〜アニメと文学の分析〜

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ヴァイオレット・エヴァーガーデン6話〜オモテ族とオモテ族〜

6話のテーマは「寂しさとの決別」

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簡単なあらすじを説明する

 

仕事で天文台へ→リオンと古文書の解読と代筆→図書館での会話→アリー彗星観測→リオンとの別れ

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6話は1〜5話と大きく異なっている。

 

異なっている点は二つ。

・ヴァイオレットとリオンがどちらもオモテ族

・手紙が出てこない

 

オモテ族は率直な言い方を好み、嘘が下手である人間、ウラ族は遠回しの言い方を好み、嘘や隠し事をする人間のことである。

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詳しくは下の稿を読んでほしい。

 

 

まず前者について

今までの話はヴァイオレットとエリカ、ダミアンとシャルロッテのようにオモテ族とウラ族がペアになって展開されていた。

 

しかし、6話に登場するリオンはヴァイオレットと同じく、率直な言い方で嘘が下手であるという点からオモテ族に分類される。

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気になったシーン

 

(14分09秒〜)

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ヴァイオレット「少し似ていますね」

似た者同士なのだからオモテ族とオモテ族である。

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オモテ族とオモテ族のペアは性格が似ているので会話が弾み、自然と仲を深めることができる。

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つまり手紙を書かずともお互いを理解し合えるのである。仲良くなるのに手紙を必要としない。これが後者である。

 

またこのことからヴァイオレット=リオンの関係が成り立つ。今回は対(⇔)ではなくイコール(=)である。

 

しかし、ヴァイオレットとリオンが仕事で出会って仲を深めるというのでは、ありきたりでつまらない。

 

圧倒的な作画とオーケストラの音色を使って描かれるのが平凡なラブコメでは話にならない。

 

よってもっと深みのあるストーリーにしなければならない。

 

そのためにはウラ族が必要である。オモテ族とウラ族が手紙を介して気持ちを伝え合うのがヴァイオレット・エヴァーガーデンの一つのテーマでもある。

 

ではウラ族は誰だろうか。それは「アリー彗星」である。彗星は人間ではないが、ここではイメージとして例えられている。アニメは芸術作品なので人間にこだわる必要はない。

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(17分08秒〜)

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二人の会話から

ヴァイオレット→彗星=ギルベルト

リオン→彗星=リオン母親

であることが分かる。

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彗星は我々から遥か遠い宇宙を流れ、出会えるのも200年に1回である。これがヴァイオレットにとってのギルベルト、リオンにとっての母親の比喩になっている。

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先ほど6話に手紙は出てこないと述べたが、実は手紙は出てくる。正確に言うと「手紙の役割を持ったもの」が出てくる。

 

それはリオンが解読した古文書の一節にある。

 

(9分16秒〜)

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「その別離は悲劇にあらず。永遠の時流れる妖精の国にて、新たな器を授かりて、その魂は未来永劫守られるが故に」

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絵には母親と子供が描かれている。リオンとその母親である。

 

(21分21秒〜)

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彗星を見たときヴァイオレットはギルベルトを想い、リオンは母親を想っている。そして彗星から「手紙」が届く。(ヴァイオレットの口から)

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「その別離は悲劇にあらず。永遠の時流れる妖精の国にて、新たな器を授かりて、その魂は未来永劫守られるが故に」

 

分かりやすく言い換えると

 

「その別れは悲しいことではない。その想いは心の中で永遠に守られ続ける。だから閉じ篭ってないで新たな一歩を踏み出してほしい」

 

リオンは母親のことを待ち続けていた。しかし、天文台で待っていても母親に会うことは永遠にない。そんなことよりも自分の夢を追いかけてほしい、というメッセージを受け取ったのだ。

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ヴァイオレットはギルベルトの不在を寂しく感じるが、命令を待つのではなく、ドールとして一歩ずつ歩み出している。

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以上からアリー彗星からの手紙によって二人に心情の変化が起こった。

 

・リオンは母親を待つのをやめた

・ヴァイオレットはこれからもドールとして生きていこうとした

 

ウラ族からの手紙でオモテ族に変化が起こる。これは1〜5話の構造と同じである。

 

(6分57秒〜)

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リオンはヴァイオレットに一目惚れする。最も自身は自覚しておらず、無意識に恋をした。

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(20分13秒〜)

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彗星を見る直前の会話で「ギルベルトに何かあったら駆けつけるのか」という問いにヴァイオレットは「あなたにどう謝罪しようか考えている」と答えられ、失恋する。

 

そして彗星が流れる。ヴァイオレットとの心のの距離も彗星と同じくらい離れていたのである。彗星(手紙)を介してヴァイオレットに振られたのである。

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つまり、彗星を見て起きた心情の変化は

 

・リオンは母親をまつのを待つのをやめた

・ヴァイオレットはこれからもドールとして生きていこうとした

・リオンはヴァイオレットを諦めた

 

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の3つになる。たった一つのシーンで3つの感情を表現しているので、彗星が流れるシーンはより一層神秘的になる。

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(23分58秒〜)

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ヴァイオレットとリオンの別れのシーン。

リオンとヴァイオレットが会うことはない。リオンもそのような趣旨のセリフを言っている。

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それでも自分と似たオモテ族の人間と出会ったことでいくらか彼に自信がついた。 

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<思ったこと>

 

1〜5話に比べて少し物足りないといった感想を持った。

 

6話は今までの話と違って、ストーリーの構造が異なっている。当然、作り方も違う訳だから労力が余分にかかる。そのせいで完成度が若干落ちてしまったのだと考えられる。

 

具体的には(7分27秒〜)の古文書を解読するシーンは長く引っ張りすぎで、(21分21秒〜)は短すぎた。アリー彗星のシーンは6話のクライマックスなのだからもう少し引っ張っても良かった。

 

(23分58秒〜)でリオンとヴァイオレットが会うことはないと述べたが、仮にギルベルトが死亡していたのならば会える可能性は上がる。似た者同士なのだから案外うまくいくのではないか。