週休二日〜アニメと文学の分析〜

ネタバレあり。(○分▽秒〜)は録画のタイムです。Twitter→@bunbunbun_245

構造を読むとは その1~トニオ・クレーゲル~

「構造を読む」という世界が存在する。

 

これは文学に限らず、映画やアニメといったジャンルにおいても優れた作品には、「構造」が存在する。

 

しかし、一般的に「構造を読む」という考え方が広まっていないせいで、その価値を理解されていない作品が多々ある。

 

特に、古典と呼ばれる名作でも年月を経るにしたがってその価値を忘れ去られている。

 

これは非常に由々しき事態であり、何としてでも解決しなけれならない。

 

では、「構造」とは何か?

 

「構造を読む」とはどういうことなのか?

 

その意味を説明するために、まずは「トニオ・クレーゲル」という小説の説明から始めていく。

 

 ããããªã»ã¯ã¬ã¼ã²ã«ãã®ç»åæ¤ç´¢çµæ

 

「トニオ・クレーゲル」は1903年に発表された作品である。日本でいえば日露戦争の前年に当たる。中編小説で、内容も壮大というわけではないが、構造的に優れている。

 

あらすじ

 ãéæ¥ çé¸ã£ã±ããã®ç»åæ¤ç´¢çµæ

 

詩を愛する少年トニオ・クレーゲルが友人と下校したり、好きな女の子の踊りを見たり、旅をしたりする中で、芸術の世界で生きるか、平凡な一般市民として生きるかで揺れ動く青春ストーリー。

 

 

別に面白くはない

 

内容は別に面白いわけでも、面白くないわけでもない。というか文章が回りくどい。最後に主人公が出した結論も「おれは芸術も市民も、どっちも愛しているんだ!」という曖昧なものなので、正直内容だけでは名作と呼ばれる理由が見当たらない。この小説の凄さはそこにはない。

 

ソナタ形式とは

 ããã¼ãã¼ãã³ãã®ç»åæ¤ç´¢çµæ

 

 「トニオ・クレーゲル」とは音楽の形式を用いた小説である。ドイツでは音楽(クラシック)が盛んであったから、そのやり方を小説でもやってみよう、ということで書かれた。

 

そこが評価されて今日まで読み継がれている。「トニオ・クレーゲル」の価値はストーリーではなく、ここにある。

 

使われたのはソナタ形式である。

 

yomitoki2.blogspot.com

 

音楽の形式について最も分かりやすい説明が上のページにある。

 

簡単に言うと、AとBというメロディーを思いついたとして、

 

(A+B+A1+B1+A+B)

 

という感じで並べて、曲を組み立てるやり方である。(A1とB1はAとBを微妙に変えたメロディー)

 

最初のA+Bを提示部、A1+B1を展開部、最後のA+Bを再現部と呼ぶ。

 

ソナタ形式を用いた構造

 

話を「トニオ・クレーゲル」に戻す。ソナタ形式を用いた構造を以下の表に示す。

 

       表ー1 構造解析表

f:id:ramuniku_31:20181109024533p:plain

 

まず、Aは主人公が「歩く」ことが主題になっている。

 

提示部で男の子と一緒に「歩いて」下校し、展開部では微妙に変化を加えて、主人公が人生を歩む過程を描写し、再現部で旅をするという流れである。

 

ちなみに故郷やトニオのルーツであるデンマークを旅するのは、提示部を再現しているからである。

 

次に、Bは「踊り」が主題になっている。

 

提示部で好きな女の子の踊りを見て、展開部では女の友人に「踏み迷える俗人」言い放たれ、再現部でかつて好きだった女の子の踊りを見る。

 

B1は主人公が熱弁しているだけで、踊りとは関係ないのだが「踏み迷える俗人」というのが「踊り」と掛かかっている。

 

ちなみに「踏み迷える俗人」の原文はverirrter Bürger

 

直訳すると、道に迷った俗人である。

 

 ãå®åæ·éãã®ç»åæ¤ç´¢çµæ

 

今回、取り上げたのは実吉捷郎訳なのだが、「踏み迷える」と訳した訳者のセンスは素晴らしい。この訳者がソナタ形式に気づいていたかは分からないが、翻訳が卓越していることは表ー1を見ても明らかである。

 

 句構造について

 

構造とは、いわば骨組みのことである。家を建てる際、骨組みが不安定なら家はたちまち倒れてしまう。これを防ぐには骨組みをより強化、堅固なものにする必要がある。

 

「トニオ・クレーゲル」もより堅固な構造とするための工夫が用いられている。それを明らかにするために章立て表を示す。

 

       表ー2 章立て表

f:id:ramuniku_31:20181109040758p:plain

 

表ー2からA-A1-AとB-B1-Bにそれぞれ似たような出来事が起こっているのが分かる。このような工夫を「対句」と呼ぶ。対句については下の記事に説明がある。

 

dangodango.hatenadiary.jp

 

それぞれの対句について説明していく。

 

青色と薄茶色の部分は、先ほど説明した通りである。

 

・恥をかく

Bで 踊りを間違えたトニオはみんなに笑われて恥をかく。B1でトニオは女の友人リザベタに大勢の前で詩を読んで恥をかいた少尉の話をする。Bで踊りで倒れて、恥をかいた蒼白い少女をトニオが助ける。

 

つまり、この蒼白い少女はかつてのトニオ自身である。トニオが助けたのは目の前の少女であり、過去の自分である。

 

・笑われる

Bで踊りを間違えたトニオは好きだった女の子にも笑われてしまう。B1でトニオは熱弁するもリザベタににやにや笑われてしまう。Bでかつて好きだった女の子を見つけたトニオは心の中で「あざ笑ったのか」と問いかける。

 

・名前

この説明をする前に、登場人物について整理する。

       

 表ー3 外見の特徴による登場人物の分類

f:id:ramuniku_31:20181109151649p:plain

 

注目すべきは、「曲がった脚」という共通点を持つ、インメルタールとゼエハーゼである。(ちなみにトニオと蒼白い少女も黒い目をしている)

 

インメルタールが出てくるのは

Aでトニオは友人ハンスに「君の名前は変だ」と言われて傷つく。同級生のインメルタールは気の毒そうにしている場面。

 

ゼエハーゼが出てくるのは

Aで故郷のホテルでトニオは警官に名前を聴取され、詐欺師と疑われる。ホテルの支配人ゼエハーゼは気の毒そうにしている場面。

 

つまり、ハンス=警官でインメルタール=ゼエハーゼである

 

この二つの場面は対句である。

 

どちらもトニオの名前を悪く言われ、脚の曲がった男がそれを気の毒そうにしている。

 

そしてA1ではトニオが詩人として名前が知れ渡る描写がある。これも対句に含まれる。

 

最初に名前をバカにされた思い出、次に詩人として名前が売れたこと、最後に警察に詐欺師疑われ、名前を聴取されるという展開である。

 

以上の対句構造が「トニオ・クレーゲル」の構造を支えている。

 

まとめ

 

ここまで、「トニオ・クレーゲル」の構造を読んできた。

 

このように、表面的に読むだけでは分からない裏の世界、「構造を読む」という世界が存在する。

 

今回取り上げた「トニオ・クレーゲル」の場合、それはソナタ形式であり、それを補強する対句構造であった。

 

そして、このような構造を持つ作品は他にも存在する。

 

次回はそれについて説明する。

 

 

 

<参考>

 原文はこちらのページで見られる。ドイツ語に自信のある方はこちらからどうぞ。

http://www.gutenberg.org/files/23313/23313-h/23313-h.htm

 

<出典>

https://www.amazon.co.jp/%E3%83%88%E3%83%8B%E3%82%AA%E3%83%BB%E3%82%AF%E3%83%AC%E3%82%A8%E3%82%B2%E3%83%AB-%E5%B2%A9%E6%B3%A2%E6%96%87%E5%BA%AB-%E3%83%88%E3%82%AA%E3%83%9E%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%83%9E%E3%83%B3/dp/4003243404

https://en-konkatsu.com/koitori/mune-kyun/2423/

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%B4%E3%82%A3%E3%83%92%E3%83%BB%E3%83%B4%E3%82%A1%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%99%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%BC%E3%83%B4%E3%82%A7%E3%83%B3

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AE%9F%E5%90%89%E6%8D%B7%E9%83%8E

「青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない」の今後の展開を予想しようの巻

f:id:ramuniku_31:20181030213027p:plain

 

「さて、青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない、がどうなるか予想しようのコーナー」

 

「なんか突然やな」

 

「ただアニメを見るのも飽きるしな」

 

「そういうもんなのか」

 

「そういうもんや」

 

「それでも説明はしてもらわんと」

 

「その前にこのアニメ、タイトル長いから『青ブタ』と略してもええか?」

 

「別にそれは構わん」

 

「趣旨としては現在放送中の青ブタの今後のストーリー展開を予想して当てよう、ということや」

 

「今は4話の放送が終わったとこやな」

 

「原作のライトノベルは全く読んでないので予備知識ゼロで予想していく」

 

「読んでたら予想にならんやろ」

 

「確かに」

 

「あとやるのはええとして、ただ当てずっぽうというのも味が無いで」

 

「一応、目星は付いてる」

 

「ほう聞かせてもらうか」

 

「なんで偉そうやねん」

 

「ええやろ」

 

「まあええか」

 

「ということで予想していく訳だが、まず手がかりというかキャラクターやら何やらを整理する必要がある」

 

「せやな」

 

 「ということで、ポン」

 

f:id:ramuniku_31:20181030191112p:plain


「なんやこれは」

 

「青ブタのキャラクター構成表や」

 

「そうじゃなくて、どうして隣に涼宮ハルヒがくっついている」

 

「それがさっき言った目星や」

 

「というと」

 

「この作品はキャラやストーリー展開が涼宮ハルヒの憂鬱を下敷きにしてると思うねん」

 

「たしかに似てる点は多い。主人公は無気力で独白が多い、ヒロインがバニーガールのコスプレをする、ヒロインが消失する(しかける)、部室にはメガネの少女がいて、よく主人公は彼女を頼りにしている、男前の同級生がいる、などなど」

 

「下敷きにしているという証拠は多い」

 

「だけど表を見たところ、似てない点も多いな」

 

「その辺はまだ4話だから仕方がない」

 

「仕方がないでええんか」

 

朝比奈みくる朝倉涼子に相当する人物がいないというのは痛いが、今後出てくることに期待している」

 

「では予想とやらを始めてくれるか」

 

「ということで、ポン」

 

f:id:ramuniku_31:20180901214839p:plain



「なんやこれは」

 

涼宮ハルヒの憂鬱の章立て表や」

 

「ぐちゃぐちゃすぎて分からん」

 

「そこは勘弁してくれ」

 

「表を見ると、1~3話の桜島麻衣が消える云々は憂鬱ラストの閉鎖空間に対応、4話以降はエンドレスエイトに対応している」

 

「今後の展開としては、退屈、笹の葉ラプソディミステリックサイン孤島症候群、溜息、朝比奈みくるの冒険、ライブアライブ射手座の日、サムデイインザレイン、消失の中からどれかが出てくるというわけか」

 

「1クール13話しかないから全部をやるのは考えづらい。面白そうなのをピックアップしてやるとみている」

 

「それなら予想の基本形はこうやな」

 

f:id:ramuniku_31:20181030212222p:plain

 

「とりあえず今やってる古賀朋絵の話は何話進行するのかも含めて、空欄を埋めていく」

 

「じゃあこんなんはどうや」

 

f:id:ramuniku_31:20181030201929p:plain

 

「溜息と消失か」

 

「溜息に相当する話で新ヒロインが出て、長門役の双葉理央が消失をやる」

 

「妹がおらんけどええんか」

 

「妹はハルヒでもモブみたいなもんだったし大丈夫やろ」

 

「だけどトラウマで不登校というなかなかディープな設定だったで」

 

「そういうお前はどうなんや」

 

「こっちの予想はこう」

 

f:id:ramuniku_31:20181101122024p:plain

 

「溜息+ライブアライブは文化祭絡みのストーリーの中で、バンドの演奏シーンが出てくるということか」

 

「せやで」

 

「だけど妹のかえでが笹の葉ラプソディなのが納得いかん。ハルヒでは1話分しかない回やぞ」

 

「トラウマを解決しに主人公と過去へ戻るみたいな話を予想している」

 

「なんか一気にSFになったな」

 

「思春期症候群とかいう設定自体そもそもSFやろ」

 

「まあそうなんやけど」

 

「なんにせよ、新キャラが出てくること、理央が最終エピソードになることは決まりやな」

 

「そうしないと涼宮ハルヒとの関連性が薄くなってしまうからな」

 

「いろいろ組み合わせがあって面白い」

 

「こんなのはどうや」

 

f:id:ramuniku_31:20181030204538p:plain

 

「これは」

 

「やっぱり孤島に行ってお色気出すのも大切だと思わんか」

 

「ほぼないやろ」

 

「ないとも限らん」

 

「百歩譲って孤島で水着やるのはいいとしても、ヒロイン全員というのはいただけない」

 

「だれか一人でも欠けたらかわいそうやろ」

 

「わけわからん」

 

「ふざけるのはこれくらいにして、そろそろ最終決定を決めないと」

 

「可能性が高いのでいくとやっぱこれやろ」

 

f:id:ramuniku_31:20181101122024p:plain


「水着はなくてええんか」

 

「ええわ」

 

「という感じで予想してみましたが、皆様もぜひ考えてみてくださればと思います」

 

「こういう思考訓練は創作における筋トレのようなもので、クリエイター志望の方にもおすすめです」

 

「では、結果を楽しみにしながら今回はこの辺で」

 

「さようなら」

 

 

 

「なあ」

 

「なんや」

 

「さっきの涼宮ハルヒを下敷きにしてる云々の話やけど」

 

f:id:ramuniku_31:20181030191112p:plain

 

「これのことか」

 

「そう」

 

「これがどうした」

 

「偶然やろ、と言われたらそれまでやと思わないか」

 

「それを言ったらおしまいやろ」

 

「なんでや」

 

「ある程度の完成度を持つ作品は過去の名作を下敷きしているもので、それを偶然と言ってしまうのは乱暴にもほどがある。もしそう考えるなら、過去に偶然一致した作品を提示してそういう例があることを証明しなければいけない」

 

「そうは言うけど、涼宮ハルヒの憂鬱なんてほとんどのアニメが下敷きにしている教科書みたいなもんやろ」

 

「確かに。『氷菓』『やはり俺の青春ラブコメは~』など影響を受けた作品は多いな」

 

「だから似てるからって別に騒ぐことではないと思うねん」

 

「青ブタは露骨すぎるくらい似ているし、原作者もかなり意識していると思うんや」

 

「作者に関しては単なる妄想やろ」

 

「予想なんて、結局のところ妄想みたいなもんやで」

 

「無茶苦茶やないか」

 

「何にせよ、続きを見ないと分からん」

 

「それもそうやな」

 

「ということで、今度こそ本当に」

 

「さようなら」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「注文の多い料理店」解説

宮沢賢治の代表作の一つ。国語の教科書に載るくらい有名である。子供向けに書かれた割には良くできている。しかし、何がそんなにすごいのか理解されていない。

 ã注æã®å¤ãæçåºãã®ç»åæ¤ç´¢çµæ

 

あらすじ

 

宮沢賢治 注文の多い料理店

 

あらすじは、わざわざ書かない。短編なので、忘れてしまった方は上記のページから読んでほしい。

 

注文の多い料理店」の不可解な点

 

冒頭、「白熊のような犬二匹つれて、だいぶ山奥の、木の葉のかさかさしたとこを、こんなことを言いながら、あるいておりました。」とある。

 

猟犬 - Wikipedia

 ãæ´ç¬ãã®ç»åæ¤ç´¢çµæ

普通、日本で猟犬といえば柴犬である。そもそもシロクマのような大型犬が狩猟に向いているとは思えない。謎である。

 

 さらに、この直後、二匹の犬は「あんまり山が物凄いので」という理由で泡を吹いて死んでしまう。山がすごいから犬が死ぬとはどういうことなのか?風に吹き飛ばされたのか、寒さのあまり死んだのか、それさえも書かれていない。意味不明である。

 

これ以外にも常識ではありえない展開が起こる。つまり、リアリティのある童話ではなく、昔話のような抽象的な物語とみて考えるべきである。頭柔らかくして、子供に戻った気持ちで読み進める。

 

読み解くヒント

 

抽象的な作品というのはたいてい読者が読み解けるように、作者からヒントが与えられている。賢治もヒントをちゃんと残してくれている。

 

ヒントその1

山猫軒に入ると、たくさんの扉がある。扉には料理店からの注文が書かれている。開けてみると裏側にも注文が書いてある。

 

ヒントその2

最後の扉には「さあさあおなかへおはいりください~」とある。

 

 ヒントその3

二人が山猫軒に行く前にこんな描写がある。「風がどうと吹いてきて、草はざわざわ、木の葉はかさかさ、木はごとんごとんと鳴りました。」

 

同じ描写がもう一度出てくる。復活した二匹の犬に助けられた後に、「風がどうと吹いてきて、草はざわざわ、木の葉はかさかさ、木はごとんごとんと鳴りました。」

 

ヒントその4

「じつにぼくは、二千四百円の損害だ」「ぼくは二千八百円の損害だ」「山鳥を十円買って」等の不自然に強調された値段

 

ヒントその1とその2は「この物語も扉のように表と裏がある」ということである。(その2の「おなかへおはいりください」は、部屋の中とお腹が掛かっている)

 

扉の文字について、まとめたのが下の表-1である。

 

                表ー1 扉の文字

f:id:ramuniku_31:20181018033503p:plain

 

ヒントその3は場面の切り替わりを教えてくれている。「風がどうと吹いてきて~」で場面が切り替わるので、そこで話を3分割する。

 

               表ー2 章立て表

f:id:ramuniku_31:20181018024656p:plain

 

 Aパート:山奥、Bパート:山猫軒、Cパート:東京である。A-1とB-1、A-2とB-3、A-3とB-2がそれぞれ対になっている。Cは短いが、結末部である。

 

さらに、AとBの対句はこれだけにとどまらない。作中に対句となる表現が頻出する。ここで「風がどうと吹いてきて~」を基準に、下の表ー3を作成する。

 

               表ー3  対句対応表

f:id:ramuniku_31:20181018030947p:plain

 

これ以外にも対応する対句はあるかもしれないが、賢治の文章の密度の濃さが分かる。

一つ一つの事象が他の事象と密接にかかわっているので、密度が濃くなって読んだ人の頭の中に残りやすくなる。この文章の密度こそ賢治の特徴であり、「注文の多い料理店」の不気味さの原因である。

 

恐るべき構造

 

表ー1で見たように扉の枚数は7枚である。表ー2からA+B+C=3+3+1=7の構造になっているのが分かる。7で一致していることに注目して、二つの表を合体させる。

 

               表ー4 章立て表2

f:id:ramuniku_31:20181018035831p:plain

 

表ー4を見れば、「風がどうと吹いてきて~」を基準に3分割したことが正しいと証明される。ここまで密度の濃い文章はすごい、というより怖いという感じがする。

 

そしてCパートに対応するのが「大きな二つの鍵穴」である。つまりその後が物語の鍵、核心部分であることが分かる。

 

紙幣

 

最後にヒントその4である。ここが主題に関わる重要なヒントになっている。

 

結局、「注文の多い料理店」は二人の紳士が二匹の犬に助けられるも、顔が「くしゃくしゃの紙くず」になったまま戻らなくなって幕を閉じる。ずいぶん不気味な終わり方である。

 

くしゃくしゃの紙くずの顔、とはどういう意味なのか?

 

二人の男は、金持ちで、山奥で獣がいないことに文句を言い、犬が死んでも金の話しかせず、助けてもらった後も十円(現在でいうと5000円くらい)もする山鳥を買って東京へ帰る。

 

彼らは金持ちであるがゆえに、金に卑しい人間である。それと同時に獣を無下に扱う。鹿の横っ腹を撃ちたいとか、犬が死んでも「二千四百円の損害だ」と金のことだけを考え、都合のいいときだけ、犬に助けてもらう。自然に対する敬意を持たない人々である。

 

賢治はそういう人々に抗議するために、子供たちがそういう大人にならないように「注文の多い料理店」を書いた。

 

つまり、この結末にある「ぐしゃぐしゃの紙くず」とは、顔がぐしゃぐしゃになっているのだから、顔の描かれた紙幣のことである。

 

自然を軽んじ、経済ばかりに囚われた社会そのものを批判している。

 

ãä¸åæ­ãã®ç»åæ¤ç´¢çµæ

 

 

ヒントその4は紙幣を暗示させるために、わざと値段を強調して書いたのである。

 

 

ところで、「白熊のような二匹の犬」とはなんだったのだろうか?

 

ゲーテファウスト第一部 書斎(一)にこんな一節がある。悪魔メフィストフェーレウスが黒い犬に化けてファウストの書斎に現れた後、

 

この中に一人つかまっている。

みんな外におれ、ついてはいるな。

まるで罠にかかった狐のように、

地獄の古山猫がびくびくしている。

 

とある。賢治の時代には、森鴎外訳のファウストが出ていたはずなので彼が読んでいてもおかしくはない。山猫が犬を恐れてびくびくしている様子が分かる。山猫軒という店名はここからとったものと考えられる。ファウストも経済を扱った内容が出てくる。(ただし、賢治と異なり、ゲーテは紙幣発行を好意的にとらえている)

 

 ããã¡ã¦ã¹ããç¬ãã®ç»åæ¤ç´¢çµæ

 

恐らく、賢治はファウストの一部を取り込もうとした。そこで使われたのが犬である。

 

西洋文化では犬は悪魔の化身であり、嫉妬の象徴でもあった。

 

しかし、日本では犬に対するイメージが昔からかなり良かった。南総里見八犬伝忠犬ハチ公、最近でいうと「おおかみこどもの雨と雪」である。日本では犬は忌むべきものではなく、忠義の象徴として文化に吸収されてきた。

 

f:id:ramuniku_31:20181018054510p:plain

賢治はこれを理解し、悪魔メフィストの黒い犬の対比として白熊のような犬を作った。二匹なのは神社の狛犬のように、対になって存在するものという考えがあったのだろう。これは作品が対句構造をもっていることの暗示にもなっている。

 ãçç¬ãã®ç»åæ¤ç´¢çµæ

 

そして賢治の犬を受け継ぐのが宮崎駿もののけ姫である。人間を憎みながら、人間の子を育てるモロの君なんかは完全に「白熊のような犬」である。

ããã®ã®ã姫ãã®ç»åæ¤ç´¢çµæ

 

 

余談

 

夏目漱石の弟子だった鈴木三重吉は賢治の作品を読んで「ロシアにでも持っていけばいい」と言い放ったそうである。これはあながち間違いではない。ここまで緊密した構造はロシア文学に似ているからである。カラマーゾフの兄弟の主役は三兄弟である。だから3という数字で物語を組み立てている。こだわり方が異常である。

 

ただし、賢治に価値を見出せなかった鈴木には残念と言わざるを得ない。彼が冷たくあしらった男こそ師匠の漱石が探し求めていた答えを見つける人物だったのだから。

 関連

 

dangodango.hatenadiary.jp

 

涼宮ハルヒの憂鬱は6+1構造だった。注文の多い料理店は3+3+1構造である。どちらも7になるのは偶然なのだろうか。

 

 

matome.naver.jp

 

この方の解説は一読の価値があります。漱石、鴎外が苦しんだ西洋文化の正体を賢治は突き止めています。完成はしませんでしたが。

 

 

 

出典

http://chigasakiws.web.fc2.com/taisyou01.html

https://www.amazon.co.jp/%E6%B3%A8%E6%96%87%E3%81%AE%E5%A4%9A%E3%81%84%E6%96%99%E7%90%86%E5%BA%97-%E6%96%B0%E6%BD%AE%E6%96%87%E5%BA%AB-%E5%AE%AE%E6%B2%A2-%E8%B3%A2%E6%B2%BB/dp/4101092060

https://www.amazon.co.jp/%E3%82%82%E3%81%AE%E3%81%AE%E3%81%91%E5%A7%AB-DVD-%E5%AE%AE%E5%B4%8E%E9%A7%BF/dp/B00K731JQ4

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9F%B4%E7%8A%AC%E3%81%BE%E3%82%8B

https://www.amazon.co.jp/%E9%87%8C%E8%A6%8B%E5%85%AB%E7%8A%AC%E4%BC%9D-DVD-BOX-%E6%BB%9D%E6%B2%A2%E7%A7%80%E6%98%8E/dp/B000E0VMJO

http://gifu-art.info/details.php?id=900

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%8F%E7%9B%AE%E6%BC%B1%E7%9F%B3

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%80%E5%86%86%E7%B4%99%E5%B9%A3

涼宮ハルヒの消失~構造、音楽、そして続編~

前回のつづきから

涼宮ハルヒの消失~エヴァの消失~ - アニメの感想など。

 

 ã涼宮ãã«ãã®æ¶å¤±ãã®ç»åæ¤ç´¢çµæ

 

作品を読み解くには、構造を読み解く必要がある。構造を読み解くには、章立て表とキャラクター表が必要である。キャラ表は前回出したので今回は章立て表を使っていく。

 

章立て表は以下の通りである。

          表ー1 章立て表

f:id:ramuniku_31:20180924184300p:plain

f:id:ramuniku_31:20180921175932p:plain

f:id:ramuniku_31:20180921181846p:plain

 

 

まずは冒頭である。

 

映画で一番大切なのはクライマックス。その次が冒頭である。構造を読み解くヒントが隠されているはずである。

 

冒頭は以下の通り。

 

キョンの部屋で目覚まし時計が鳴り、寝起きで薄目(観客の視点が半開きのまぶたからになっている)になりながら辺りを見渡す。カーテンの間から朝日の光が差し込んでいる。二度寝しようとしたところ妹に起こされる。

 

キーワードは目覚まし時計、薄目で辺りを見渡す、光、妹に起こされる、の四つである。この四つが繰り返し出てくるシーンが計8回ある。

 

これは繰り返し同じアイテムを登場させることによって、観客が無意識に美しいと感じさせるテクニックである。

 

例えば、 7-3の朝倉に刺されるシーンがハラハラするのはストーリーだけでなく1-1から5ー1までのシーンが繰り返し視聴者の頭の中に残っていたからだ、というわけである。

 

それを踏まえて、下に示す表を「繰り返し構造表」と呼ぶことにする

 

      表ー2 繰り返し構造表

f:id:ramuniku_31:20180923000942p:plain

 

章番号は先ほどの表―1を参照してほしい。

 

構造

 

注目すべきは7-3である。 

 

         表ー3

f:id:ramuniku_31:20180923001146p:plain

 

1-1から5-1までは基本的に同じだが、7-3は工夫が凝らしてある。

 

7-3には目覚まし時計が出てこないが、代わりに二人のみくるが泣きながらキョンを起こしている。目覚まし時計とは音を鳴らして人間を起こす、つまり「鳴く」である。みくるも泣いている、つまり「泣く」である。泣くと鳴くが掛かっている。

 

それがなんだ、と思われるかもしれないが、映画、文芸とは掛け合いの連続である。

 

花の色は うつりにけりな いたづらに
       わが身世にふる ながめせしまに

 

百人一首に選ばれている小野小町の和歌で、「降る」と「経る」とが掛かっている。謎かけみたいなものであるが、文化なんぞこんなものである。

 

 ãå°éå°çº ç¾äººä¸é¦ãã®ç»åæ¤ç´¢çµæ

 

消失の話に戻る。キョンが二人のみくるに起こされたのは表-1の「目覚まし時計」(緑色)と「女性に起こされる」(黄色)の二つの役割を果たしていることを暗示しているからである。もっとも伏線だからということもあるが。

 

このシーンはキョンが目的を果たそうとする寸前に朝倉に不意打ちされるというショッキングなシーンであるが、より印象的なシーンにするために表のような工夫がなされた。

 

次は9-1に注目する。

 

         表―4

f:id:ramuniku_31:20180923001048p:plain

 

目覚まし時計は出てこない。代わりに小泉がリンゴの皮を剥いている。9-1では夕日が差し込んでいる。街灯(夜)➡夕日➡朝日の順番になっているのは時系列がごちゃごちゃになっている本作の特徴を表している。

 

(ただし、×があるように必ずしもすべて揃っている訳ではない)

 

前回も述べた通り、このシーンはキョンハルヒが隣で寝ている。憂鬱と逆でキョンが起こす立場であるが。

 

以上のように、表面的なスト―リーだけでは見えてこない「構造」というものが存在する。

 

(もちろん、すべての作品にこのような構造が存在するわけではない。あくまで一部の優れた作品のみに存在する)

 

  表ー4 憂鬱とサムデイインザレインと消失の比較表

f:id:ramuniku_31:20180924181813p:plain

 

以前、紹介した憂鬱とサムデイインザレインを比較した表に消失を加えたものである。整合性がとれなかったのはキスの項目。 ストーリーの都合上仕方なかったものと思われる。

 

消失が成功したのも表ー4を見れば明らかである。テレビシリーズからの流れをしっかり押さえて作っているのだから。

 

 

音楽

 

ところで映画とは総合芸術である。映像、演劇、文学、そして音楽。ジブリの成功も半分は久石譲のおかげと言っても過言ではない。

 

youtu.be

 

オーケストラとは西洋の文化が産み出したものである。にもかかわらず、聴くと日本の森の風景が浮かんでくる。太く、荘厳な縄文杉の姿が。オーケストラという西洋の楽器を用いながら、日本の原風景を描き出すのだから天才である。

 

f:id:ramuniku_31:20180925161233p:plain

最近でいえば「君の名は。を思い出してください」と言われたら、頭の中で勝手にRADWIMPSの音楽が流れだすだろう。音楽とはそれほど重要なものである。

 

消失も音楽が優れている。具体的なシーンを挙げると、5-3~5-4(教室を飛び出して坂を駆け抜ける)、8-3(キョンが心の中のもう一人の自分を跳ね飛ばす)、9-2(病院の屋上で長門と話す)、の3つである。

 

5-3~5-4にかけてのBGMは疾走感があって良い。陰鬱な展開が多かったのが、ここで一気に加速していくことが伝わってくる。

 

あと表ー1の章立て表を見ると坂のシーンが合間に頻出しているのが分かる。これも一種の繰り返し構造で、脳に何度も坂を認識させることでBGMをより効果的にさせている。

 

8-3はクライマックスなので、言わずもがな一番盛り上がる音楽が流れる。主人公が自問自答の末、自らの退路を断つ。セリフや作画云々より音楽の素晴らしさ際立ったシーンである。

 

 

youtu.be

 

9-2で流れたエリック・サティジムノペディ長門との会話のシーンで使われた。エヴァもそうだったが、クラシックを使おうという発想自体、アニメ、実写問わず勇気がいるものである。格がワンランク上になるので映像もそれに見合った完成度にしなければならない。

 

ゆったりとした静かなメロディが流れてくる。雪が降るように、白雪姫が眠るように。

 

キョンの言った「ゆき」は雪と有希が掛かっている。憂鬱の桜、サムデイインザレインの雨、消失の雪。まるで和歌の世界である。西洋人が聖書を大切にするように、日本人は和歌を重んじている。一瞬の美を切り取って、愛でるのが日本人の情趣である。そういう点で見ると、伝統的なアニメともいえる。

 

 

まとめ

 

話が長くなってしまったが、要するに

 

「自分に正直に生きろ。さもないと、今ある幸せを無くしてしまうぞ」

 

ということである。斜に構えて、傍観者気取ってたら人生なんてあっという間である。自分の人生もっと積極的に生きねばならぬ。

 

この部分が作品の根幹になるので、最低限ここだけは押さえなければならない。

 

 

f:id:ramuniku_31:20180807222015p:plain
    図ー1  憂鬱のキョンの性格図

 

以前、紹介したキョンの性格図である。点Oがキョンである。原点にあるということはプラスでもマイナスでもない、つまり傍観者である。

 

dangodango.hatenadiary.jp

 

 

この図が消失の物語を経て下のように変化する。

 

f:id:ramuniku_31:20180925151939p:plain

   図―2  消失のキョンの性格図

 

赤い点O'がキョンの性格、心の変化である。ほんの少しではあるがプラスに進んだ。積極的になれたのである。アムロやルフィのように熱い闘志を燃やしているわけではない。ガンダムパイロットでも海賊でもないが、世界を守るために一歩だけ前に進んだのである。SOS団の団員その1として。

 

 

続編について予想

 

 ã涼宮ãã«ãã®é©æãã®ç»åæ¤ç´¢çµæ

 

 

ところで、涼宮ハルヒの下敷きになっているエヴァは2018年の段階でまだ完結していない。下敷きであるエヴァが完結してないということは涼宮ハルヒも完結してなくて当然である。原作は確か驚愕で止まっていたような気がする。

 

ここまで読んでくださった皆様ならもうお分かりになると思うが、ハルヒの続編がなかなか更新されないのは、エヴァのせいであると考えている。これはあくまで予想であるが。

 

下敷きとなった作品の完結を見てからでないと着地点をうまく決められない。そうなったら更新を止めて待つしかない。

 

繰り返し言うがこれは「パクリ」などではない。アニメに限らず、名作から名作へとバトンをつなぐように作られてきた。

 

憂鬱から消失は旧劇までの内容を踏まえてで作られてきたが、新劇になって急に新しいストーリーが加わり、びっくりして更新が止まったのだと推測する。

 

 

youtu.be

 

こんな予告が出ているが、本当に2020年に公開されるかは分からない。そもそもこれで完結するかも分からないので、涼宮ハルヒシリーズが完結するのは当分先である。少なくともエヴァが完結するまではハルヒは完結しないと予想している。

 

 

 

 そんなことを言っていたらこんなツイートを発見した。ハルヒの新作短編である。連載が再開するか、まだ分からないが、自分の予想なんて戯言に過ぎないのだと悟った。

 

 

 涼宮ハルヒの消失については以上である。

 

 

 

 

 

参考

https://www.ogurasansou.co.jp/site/hyakunin/009.html

 

出典

https://www.amazon.co.jp/%E5%8A%87%E5%A0%B4%E7%89%88-%E6%B6%BC%E5%AE%AE%E3%83%8F%E3%83%AB%E3%83%92%E3%81%AE%E6%B6%88%E5%A4%B1-%E3%82%AA%E3%83%AA%E3%82%B8%E3%83%8A%E3%83%AB%E3%82%B5%E3%82%A6%E3%83%B3%E3%83%89%E3%83%88%E3%83%A9%E3%83%83%E3%82%AF-%E3%82%B5%E3%83%B3%E3%83%88%E3%83%A9/dp/B002WQSV1A

 

http://www.caruta.net/ononokomachi.html

 

http://www.kiminona.com/

 

https://www.amazon.co.jp/%E6%B6%BC%E5%AE%AE%E3%83%8F%E3%83%AB%E3%83%92%E3%81%AE%E9%A9%9A%E6%84%95-%E5%88%9D%E5%9B%9E%E9%99%90%E5%AE%9A%E7%89%88-64%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%82%B8%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%82%AB%E3%83%A9%E3%83%BC%E7%89%B9%E8%A3%BD%E5%B0%8F%E5%86%8A%E5%AD%90%E4%BB%98%E3%81%8D-%E8%A7%92%E5%B7%9D%E3%82%B9%E3%83%8B%E3%83%BC%E3%82%AB%E3%83%BC%E6%96%87%E5%BA%AB-%E8%B0%B7%E5%B7%9D-%E6%B5%81/dp/4044292108

涼宮ハルヒの消失~エヴァの消失~

劇場版涼宮ハルヒの消失は大人気作となったテレビ版の続編であり、当時としては異例の興行収入を誇った作品である。

 æ¶¼å®®ãã«ãã®æ¶å¤±

 

人気だけではなく、日本アニメ史的にも重要な作品である。涼宮ハルヒが後のアニメ与えた影響は大きい。

 

よって解析して内部構造をしっかり紐解く必要がある。解析せずに「あー面白かった」で終わらすには惜しい作品である。

 

テレビ版を見てないと分からない上に時系列がぐちゃぐちゃになる作品であるが、抽象的という訳ではない。一回見ただけで全体像はつかめるはず。

 

あらすじ

 

ある日、主人公は仲良くしてた女の子が存在ごといなくなってることに気付く。四苦八苦の末、タイムスリップに成功した主人公は犯人を突き止め、元の世界へ帰ってくる。めでたしめでたし。

 

タイトルの意味

 

この映画は題名の通り涼宮ハルヒが消失、つまりいなくなってしまうのか、というとそうではない。何者かによって一変した世界の中でハルヒは別の高校の学生になっていた。

 

ではなにが「消失」したのか?

 

以前述べたようにエヴァとの関係性から紐解いていく。

 

dangodango.hatenadiary.jp

 

 

簡単に説明するとハルヒエヴァ(初号機)+アスカで作られたキャラクターである。

 

そして消失のハルヒを見てみる。憂鬱と比べて髪が長くなっている。もっと言うと、エヴァのアスカに近づいている。制服は北高ではないし、SOS団団長でもない。

 

改変後のハルヒに世界を変える力はない。憂鬱でハルヒはアスカとエヴァ(初号機)の言い換えだと説明したが、この世界のハルヒはアスカの要素しかない。

 

ハルヒからエヴァの要素がごっそり抜け落ちている。

 

ここで以前、紹介した涼宮ハルヒエヴァを比較したキャラクター構成表に注目する。

 

f:id:ramuniku_31:20180810181953p:plain

 

 

これが改変後の世界になると以下の表になる。

f:id:ramuniku_31:20180915180758p:plain

 

表の涼宮ハルヒの項からエヴァが消えている。消失している。

 

涼宮ハルヒの消失とは、「涼宮ハルヒ(の中のエヴァ)の消失」というタイトルである。

 

ところでエヴァの最終回にエヴァネルフもない平和な日常が出てくる。幼馴染のアスカがいて、転校生のレイが出てくる世界。シンジはそれを「あったかもしれない世界」と言ったが、あの世界を長編映画にしたのが消失である。

 

 

 

キョンの精神世界

 

クライマックスでキョンの精神世界のシーンがある。キョンはもう一人の自分に問われる。自分の行動の矛盾を指摘される。これはエヴァでたびたび登場するシンジの心の葛藤に対応している。シンジもキョンももう一人の自分に苦しむが最終的にそのままの自分を受け入れる。

 

消失は長門の物語と思われがちだが、メインはキョンの成長物語である。何だかんだ言ってハルヒSOS団が好きだった自分を受け入れるまでの物語である。シンジがエヴァパイロットとしての自分を受け入れたように。

 

 

 

エヴァとの違い

 

エヴァと消失の違いは元の世界に帰ってきてからのヒロインの態度にある。

 

旧劇のラスト、シンジとアスカは隣で眠っている。シンジに首を絞められたアスカが一言「気持ち悪い」

 

消失はキョンが寝ているベッドの脇でハルヒが寝袋で寝ている。キョンに顔を撫でられて跳ね起きるハルヒキョンが目を覚まして安心しているようである。さらに病院の屋上で長門に「ありがとう」と言われる。明るい終わり方である。

 

 

 

以上の点をまとめたのが下の表である。

 

f:id:ramuniku_31:20180915174503p:plain

 

 

伝えたかったこと

 

結局は他人と生きる選択をしたシンジに「気持ち悪い」という現実を思い知らせるのがエヴァ。「そんなに現実は甘くないぞ。他人と生きることは傷つけあうことだぞ」ということである。

 

それに対し、キョンが目を覚ました時にはハルヒSOS団から喜ばれる。みんな彼のことを心配してくれている。

 

病院の屋上で長門にはこんなことを言われる。

 

「ありがとう」

 

拒絶の言葉ではなく感謝の言葉。雪が降っているとても印象的なシーンである。シンジが受けた対応とは大違いである。

 

「他人と生きていくのは傷つけあうだけじゃない。助け合い、喜び合うこともある」

 

これを伝えるために涼宮ハルヒエヴァを下敷きにしたと言ってもよい。

 

 

 次回は涼宮ハルヒの消失の全体構造について説明する。

 

dangodango.hatenadiary.jp

 

 

 

出典:

https://twilightbangle.wordpress.com/tag/%E6%B6%BC%E5%AE%AE%E3%83%8F%E3%83%AB%E3%83%92%E3%81%AE%E6%B6%88%E5%A4%B1/

 

https://www.kyotoanimation.co.jp/haruhi/movie/

 

 

 

 

 

 

 

 

 

涼宮ハルヒの憂鬱~全体構造編~

前回までキャラクターについて考察してきた

 涼宮ハルヒの憂鬱~なぜ名作なのか~ - アニメの感想など。

 涼宮ハルヒの憂鬱~エヴァとの関係~ - アニメの感想など。

 

 今回は、涼宮ハルヒの憂鬱のなかでも重要な「憂鬱」の話に注目する。

 

憂鬱Ⅰ~Ⅵには奇妙なシーンが4つある。

 

  • 憂鬱Ⅰのハルヒの髪型が曜日によって変わる話
  • 憂鬱Ⅳの大人版みくるが言った白雪姫
  • 憂鬱Ⅴのアパート管理人が言った「その娘は美人になる。取り逃がすでないぞ」
  • 憂鬱Ⅵの終盤、キョンが言った「お前のポニーテールは似合っていたぞ」そしてキス

 

これらは何の意味も持たないシーンではなく、意図的に仕掛けられたものである。順を追って説明していく。

 

一つ目はキョンハルヒの最初の会話で特に意味はなさそうだが、髪型と曜日に注意しろ、というメッセージである。ハルヒから我々への忠告ともいえる。

f:id:ramuniku_31:20180901225425j:image

二つ目は憂鬱のラストに関わる伏線である。白雪姫(ディズニー版)は毒リンゴを食べて永遠の眠りについた姫が白馬に乗った王子様のキスで目覚める物語。ここで物語に出てくる数字に注目する。

f:id:ramuniku_31:20180901225446j:image

姫が7歳のときに魔法の鏡は「世界で一番美しいのは白雪姫だ」と言い、姫は7人の小人に守られる。そして一つ目の話に出た曜日も一週間つまり7日である。さらに、ハルヒを取り巻く人物もSOS団鶴屋さん+国木田+谷口=7人である。この7人が小人に対応している。

 

一つ目の話と白雪姫は7という数字で共通している。ちなみに白雪姫は春の話だが、「憂鬱」も4~5月なので春である。

 

三つ目は朝倉のアパートの管理人がキョンに向かってささやいた言葉。伏線というわけではなさそうなのに、キョンは意味ありげにハルヒを見つめている。

f:id:ramuniku_31:20180901225502j:image

ここで白雪姫の話を思い出す。

 

その娘は美人になる、ということは美しい白雪姫のことだから言い換えると、「涼宮ハルヒは白雪姫だ。お前取り逃がすなよ」という管理人からの警告である。すなわちキョンは王子様である。王子様が白雪姫を見つけてくれないと物語は成立しないので管理人は注意した。

 

四つ目が最も謎であるが、以上の三点を踏まえれば発言の意図が見えてくる。

f:id:ramuniku_31:20180901225513j:image

 白雪姫ではリンゴと白馬に乗った王子様が出てくる。リンゴはこのシーンの前に小泉が言った「アダムとイブですよ」に関係してくる。イブは蛇にそそのかされて知恵の実、つまりリンゴを食べ、アダムにもそれを勧めて食べさせた。そして楽園を追放させられた。

 

アダム役はキョン、イブ役はハルヒである。ハルヒは閉鎖空間の中で共に生きようと勧めてくる。これはリンゴを勧めるのに対応している。

 

ただそうすれば楽園つまりSOS団を失うことになる。今の生活を選ぶにはハルヒの目を覚まさないといけない。

 

ちなみに聖書にも7は重要な数字として出てくる。「神は世界を7日で作った」「7つの大罪」聖書と白雪姫、そして涼宮ハルヒには深い関係があるとみてよい。

 

そしてキョンSOS団のある世界を選択し、ハルヒにキスをする。ここで白馬の王子様が登場する。王子のキスにより白雪姫は目を覚まして、めでたしめでたし。ポニーテール発言はポニーつまり馬を示している。

 

キスする前に「ポニーテールが好きだ」と言ったのはキョンが白馬に乗った王子様と対応していることを暗示するためである。

 

白馬じゃなくてポニーだというところがいかにもキョンらしい。

 

f:id:ramuniku_31:20180810191142j:plain

 

 

ここまで見てきたように「憂鬱」には何気ない日常のシーンにも深い意味が込められていた。下の表は「憂鬱」の構造をまとめたものである。

 

f:id:ramuniku_31:20180901230811p:plain

 

 

青色は先ほど説明したシーン、赤色はハルヒが急に着替えだしたり帰ったりするシーン。各話に一回ずつ全部で6回ある。薄緑はハルヒの思想についてである。茶色はハルヒからみくるへのセクハラのシーン。

 

エヴァとの対応関係

 

表の太字はエヴァに対応する事象である。

 

長門のメガネとアパートへ行くはキャラクター構成の項で述べた。メガネがゲンドウと対応、アパートへ行くシンジが綾波レイのアパートへ行くのと対応

 

神人はエヴァ使徒に対応、閉鎖空間はATフィールドに対応

 

ハルヒキョンの首を絞めるのは旧劇ラストでシンジがアスカの首を絞めているのに対応

 

ハルヒが望んだ世界はエヴァが暴走した結果起こる人類補完計画後の世界に対応。またそのどちらとも主人公に阻止されることで対応

 

 ポニーテールとキスはポニーに乗るつまりハルヒエヴァを乗りこなすことに対応、キスはシンジとアスカのキスに対応

 

エンドレスエイトエヴァでよく使われる過去の場面が繰り返し出てくる心理描写に対応

 

 

そもそもエヴァキリスト教に深く関係した内容なので似ているのは当然なのかもしれない。

 

 

などキリスト教関連のワードがたくさん出てくる。

 

ちなみにシンジやアスカの年齢は14歳で白雪姫も14歳である。ただしエヴァが白雪姫を下敷きにしているかは不明である。

 

次に、下の表は涼宮ハルヒの憂鬱(2009年版)全体の構造をまとめた章立て表である。

f:id:ramuniku_31:20180901214839p:plain

 

 

「憂鬱」「ライブアライブ」「サムデイインザレイン」「笹の葉ラプソディ」以外はそこまで良くない。

 

ライブアライブは9分間にわたるライブシーンの出来がとても良い。渚カヲルが言ってたように歌はリリンの産みだした文化の極みである。

f:id:ramuniku_31:20180901225539p:image

笹の葉ラプソディは七夕、つまり7月7日が重要である。ここにも7が出てくる。劇場版へ続く伏線の一つなのでおさえておく必要がある。

 

サムデイインザレインは憂鬱に次ぐ重要なエピソード

 

ここまであえて触れなかったが、7が重要と言いつつ「憂鬱」は6話構成になっている。1話足りないので整合性がつかない。

 

ここで聖書に注目する。「神は7日で世界を作った」しかし厳密には7日目に神はお休みになったとある。つまり神は6+1日で世界を創造したことになる。この+1日に当たるのが「サムデイインザレイン」である。

 

この回だけ淡々と、静かに進んでいくのは神(ハルヒ)がお休みになっているためである。

 

1話冒頭で坂を上りながら始まり、最終話ラストで坂を下りながら終わる物語なのである。

 

憂鬱とサムデイインザレインの対比関係については下の表にまとめた。

f:id:ramuniku_31:20180901222149p:plain

 

思ったこと

 

はじめて見たときからなんとなく「サムデイインザレイン」は印象に残るというか、雰囲気が好きだったのだが、ようやく原因が見つかった 。わざわざ表なんか作らなくても直感的に「サムデイインザレイン」が重要だと分かっていたのだ。人間の脳はやはりよくできている。

 

聖書でイブをそそのかしたのは蛇なのだが、涼宮ハルヒの中に蛇はいるのだろうか。憂鬱Ⅵでキョンハルヒと閉鎖空間で生きるように促す人物が一人いる。小泉一樹なのだが、蛇は裏切りの象徴であるので今後の展開が非常に気になる。

 

あと猫のシャミセンは三毛猫と三味線ということで3という数字が隠されていて、3とは長門、みくる、小泉の3人である。3人とも互いに異なる意見を持っていて対立していることを暗示している。

 

次回は劇場版涼宮ハルヒの消失について説明する。

dangodango.hatenadiary.jp

 

 

 

 

涼宮ハルヒの憂鬱~エヴァとの関係~

前回のつづきから。

ハルヒとアスカ

 ã­ã¼ãã¸ã¥ã¢ã«ï¼ã©ã¸ãªï¼

 

共通点はツンデレ。セリフに「バカキョン!」「バカシンジ!」感情の起伏が激しく、情緒不安定であること。主人公とキスをすること。主人公とはアダムとイブの関係。

 

違いはハルヒが不思議を追うのに対してアスカはトラウマに追われる。ハルヒのポニーテールに対してアスカのツインテール

 

みくるとミサト

f:id:ramuniku_31:20180810190111j:image

f:id:ramuniku_31:20180810190301j:image

共通点は年上であること。主人公に対して母性的に接すること、みくるは小泉とキス未遂し、ミサトは加持と何度もキスする。みくるは甘酒で、ミサトはビールで酔っ払う。そのときどちらも白いシャツを着ている。

 

違いはみくるが禁則事項によって未来に囚われているのに対してミサトはセカンドインパクトで父を失った過去に囚われている。

 

小泉と加持

f:id:ramuniku_31:20180810190447j:image

f:id:ramuniku_31:20180810190745j:image

共通点は男前であること。ヒロインの扱いに慣れていること。謎の「機関」に所属していること。主人公にアドバイスをする。

 

違いは小泉が同級生なのに対して加持は年上。小泉は女にモテないが、加持はモテる。

 

ハルヒエヴァ

ここまで主要キャラクターの比較をしてきたが、肝心のエヴァンゲリオンが欠けていた。ここの比較ができないのでは二つの作品は結び付かない。

 

「憂鬱Ⅵ」のクライマックスのシーンに注目する。

 

神人が近づくなか世界の命運を懸けたシーンで、キョンハルヒに向かって言う。

 

「いつだったかお前のポニーテールは、反則的なまでに似合っていたぞ」

f:id:ramuniku_31:20180810191142j:image

さらに、現実世界に帰ったあとポニーテールにしたハルヒを見て、「似合ってるぞ」と言う。

 

意味不明である。涼宮ハルヒの憂鬱の中でも、謎めいたシーンの一つである。ハルヒでなくとも混乱するだろう。なぜクライマックスのシーンでショートヘアのヒロインに対してポニーテールの話をする必要があったのか?

 

アスカのツインテールと掛けている、というのは惜しい気がする。

 

恐らくポニーは馬の一種で、ハルヒを馬に例えている。「ポニーテールが似合ってる」と言ってポニーテールにさせたキョンは馬の調教師という比喩である。唯我独尊のハルヒに命令できたのだから。

 

つまりあのシーンでキョンハルヒをコントロールした、言い換えると操縦した、と言えるでしょう。初号機のパイロットがシンジにしかできないのと同様に、ハルヒパイロットもキョンにしかできないことを暗示している。

 

この他にも、鶴屋さんがリツコ、谷口・国木田がトウジ・ケンスケと対応している等、比較できる点は多い。すべてではないが、大まかにまとめたのが下の表である。

 

f:id:ramuniku_31:20180810181953p:plain

 

 ところで、「憂鬱Ⅰ」でハルヒキョンが髪型と曜日に関する謎のシーンがあるが、あれはハルヒの髪型に注意しろよ、という作者からのメッセージだと推測する。なんとも親切なことよ。

 

キャラクター構成表については、疑問点・欠陥がありましたら教えて下さると助かります。

 

次回は全体構造について説明する。

dangodango.hatenadiary.jp

 

参考

d.hatena.ne.jp

 

 自分なんぞよりとっくの10年以上前にキャラクター表を作っている方がいた。おおむね一致しているが、細部で自分のものとは異なる。

 

偉大な先人に敬意を表して、ここに載せておく。

 

 

 

 

 

出典

http://kura3.photozou.jp/

http://www.kyotoanimation.co.jp/haruhi/gallery/200602.html

初体験

小泉一樹|無料GIF画像検索 GIFMAGAZINE [5678]

小泉一樹|無料GIF画像検索 GIFMAGAZINE [5678]

http://pony-tail.org/archives/137